WORK -制作事例-

SLBH 01

Category : House 

-1200万円で家を持つこと-
SLBH(Super Low-cost Big House)シリーズ
家は幾らで建てられるか? そんな会話から始まったプロジェクトである。 詳しく伺うと、建築工事費1200万円、夫婦と小学生の娘2人が過不足なく住めること、庭師である夫の打合せスペース・書斎、彫金作家である妻の工房といった一般的要望+仕事場としての機能、そして何よりスーパーローコストが求められた。 設計事務所が従来の設計手法で従来の住宅を1200万円で建築することはほぼ不可能ではないか。 しかしながらこの金額で建てることができれば、住宅ローンという負債を背負うことなく、家を持つことを広く可能なものとすることができるのではないか。 だが従来通り、要望される機能を設計していくと床面積、設計作業量、現場作業量が肥大しコストが足らない。様々な場面での効率化が必要になる。 そこで用途・機能を規定していく設計を行わず、古い民家のよう合理性と多様性をもった大らかな構成のみを設計・施工することとした。 具体的には、構造材は全て120mm角(桧)、開口部は同じ規格寸法のアルミサッシ引違、内部仕上げは3×6合板(910×1820)を切らずに張る、4面同じファサード、をベースに 1層目を1間グリットに柱を建てた列柱空間、2層目をトラス下の無柱空間、3層目を1間グリットのトラス梁の小屋裏空間の3層を同じ階高(1975mm)で積み上げた。 寸法は、流通材・工業製品の最適な組合せと事後の施工性によって決められ、同じ平面、断面でありながら構成の違う3つの層とし、1層目、2層目は床を張り、32坪の建物を造った。 このがらんとした構成までを用意し、住まい手の施工への参加を促す「未完成の建築」として、編集権を住まい手へ渡している。 住まい手は各層の異なる特徴をきっかけとし、家族で知恵を出し合い、時に衝突しながら自由に、あるいは不自由に、リノベーションをするように居場所を設計し構築することができる。 現状の間取りは現在の家族の状況から生まれたものであり、またそれは、いつでも住まい手が容易に更新することができる。 住まい手が関われる領域を広げ、関与し続けられる場所、状況を造ることで建築に愛着を持ち、新しい家づくりの枠組みを作ることが出来るのではないかと考えている。
住宅特集2018年6月号掲載
2018年 JIA東海住宅建築賞 優秀賞 受賞
写真:新建築社

information

完成日 2018年3月
用 途 住宅
価 格 1200万円
サイズ -
構造・材料 木造二階建て