WORK -制作事例-

SLBH 9

Category : House 

農村集落のエレメントを架構に組み込む
敷地は市街化調整区域の田園部の集落の中にある。隣接する周囲には親族が住んでおり、集落内に4世帯が住むことになる。土地は祖父から譲り受けたもので、こうしたシチュエーションは地方では珍しくない。こういったコンテクストにふさわしい建ち方として、周辺のエレメントを拾い集め、それらを用いた田の字型のグリットプランで建築を考えた。この地域の住宅には、縁側、土間、下屋、トタン板、南北の連続する開口、欄間サッシ、切妻、真壁といったエレメントが残る。これを現代の生活様式に落とし込んだ。また元は田んぼであった敷地は周囲の道路より500mmほど窪んでいたが、水害の恐れがない地域であるため、この窪みを接地面として建築を置いた。ちょうど周囲の平屋や下屋と同程度の高さとなり、遠景だと平屋、近景だと2階建てのように見える寸法で構成した。扁平柱と梁による門型フレームを1間スパンで2×6間のグリットをつくり(田の字ではなく日の字ではあるが)フレーム内に居室を配置した。それを守るよう南北を1段下がった下屋とし、水回りや玄関、デッキといった周辺環境からのバッファーと、集落のコミュニティの場として機能するよう場を設け、ひとつの屋根で覆った。水平力はフレーム外の下屋部分に負担させ、内部は短辺方向に壁のない2×6間、階高4,410mmのワンルーム(母屋)であり、2階は構造とは関係なく床受梁(取外し可能)によってつくった。大きなワンルームは生活の中心となり、後の変化にも対応できるだけの余白をもち、下屋は機能・構造的に母屋を支え、相互に関係しながら住居をつくる。架構、壁、開口、床といったエレメントが縁を切りながら同時に存在する様は、古くからの集落の建ち方を肯定しながら、変わりゆく環境や状況に呼応し風景をつくっていく建築になるのではないかと考えている。
掲載:住宅特集2023.02号 

Photo 1-3 : Hiroki Tomita
Photo 4,5 : Yukihiro Matsuda

information

完成日 2023.02
用 途 個人住宅
価 格 18,350,000 円 (without tax)
サイズ 延床面積115.93㎡
構造・材料 木造