ACTIVITY -活動報告-

Archive of daily news

ハウスLS

ひとつながりの細長い空間の中で生活が立体的に展開し
ていくような住宅。
計画地は岐阜県内主要駅付近に位置する新旧の住宅が密
集するエリアにある。周辺は細分化された土地に最大限
フットプリントを確保して、内部を分節することで住ま
いを形作っている。そのため外部との関係は限定的とな
り、奥にある住まいの表情はうかがい知れない。敷地を
訪れると細長い形状かつ周囲が建て込んでいるのでレッ
カーを効率的に使えないことが想定された。このような
条件下で一般的な建ち方や施工法を参照すると各部屋の
環境差が少なからず生じる上に施工は複雑化してしまう。
そこで、ひとつながりの細長い空間の中で生活が立体的
に展開していくような住宅をイメージした。仕切りのな
い空間は多様な環境をひとくくりにして許容してくれる。
また、間口の狭いボリュームを配置して生じる余白は光
と風を内部に導き、生活と街を繋ぐ中間領域や施工スペ
ースとして多面的に機能する。さらに、小スパンの軸組
みは構造材の材寸を抑え、効率的な施工にも繋がると考
えた。
まず、敷地の間口を二分するようなボリュームを北側に
配置することで道路よりもスケールダウンしたオープン
スペースを設けた。次に2階の床面を道路に向かってス
キップさせ、南側に向かって跳ね出した。長手方向にフ
ロアレベルが少しずつ変化することで奥行きの体感を拡
張させ、内外や上下階を緩やかに繋ぐスリットをつくり
出す。この噛み合うように層をなす空間の両端に階段を
設えることで立体的な回遊動線をつくった。さらに、1階
の外壁はメイン構造から切り離されアウトセットして階
段状の外皮フレームを形成している。このフレームが施
工中の足場として機能することで人力での建て方を可能
にした。
また、設備配管や家具等の造作物は構造体を前提とした
納まりとし、後付で構成している。構造・設備・外皮と
いう機能に分解し可視化された状態をつくることで施工
と更新を容易に行えるようにした。また隠蔽されるはず
の部材が空間に参加することで、モノを置いたり、引っ
掛けたり、くっつけたりといった異なる用途としても利
用できる状況をつくり出している。
細長い空間は身体に寄り添うような近さと様々な事象が
共存できるような遠さを併せ持つ。途切れなく続く生活
行為を線形として捉え直し、それらを束ねるようにして
ひとつながりの住宅を形作った。

2022.12.05

GALLERY crossing

岐阜県美濃加茂市の中山道沿いにGALLERY crossingは、工芸やアートを取り扱うギャラリーとして、5年ほど前に中山道沿いにオープンした。本プロジェクトはGALLERY crossingの移転リニューアルプロジェクトである。今回の移転先は移転する前の店舗から徒歩30秒の場所にある。この建物はGALLERY crossingのオーナーが解体するという話を近隣の住民から聞き、交渉の末この建物を譲り受ける形でプロジェクトがスタートした。当初のプランは建物の改装に利用できる美濃加茂市の補助金を申請し、メイン工事となる外壁や入口扉などを補助金に適応する仕様にして進めていたが、内外装の工事面積が大きくなるにつれて、工事費がかさんでいった。オーナーは補助金申請をする意味を考え、プランを再考していた。オーナーがディレクターとしてNOTA&designの加藤駿介さんに相談し、店舗設計としてTABの横山、河合が参加しプロジェクトを仕切り直すこととなった。プランを進めていく中で、この建物は以前「朝日屋」という名前で食堂として営業されており、当時から町の人々に親しまれていたことや、大通りからの交差点の角に位置するので中山道の目印となっていることから、この建物は中山道の風景として町の人々の風景に刻まれていると判断し、この建物の外観を極力変えずに街に残す方向で計画を進めていくことにした。計画としては建物の東側の道からメインのギャラリースペースAを眺めることができるように大きな窓を二つ設け、その隣に入口扉を設けた。2つの窓と入口扉のある外壁の箇所のみを施工し、外観の工事を少なくした。元々の外観に使用されていたモルタル金鏝の壁と同じ仕様とすることで色味のトーンを合わせた。

入口扉はGLから600mmのところに設け、そこから内部へ入ると1FLから+450㎜高い位置になる。エントランススペースからギャラリースペースAとギャラリースペースBを俯瞰し、そこから階段を降りてそれぞれのスペースに向かうことができる。ギャラリースペースAは外部をつなぐ、大きな二つの窓から外を眺めることができ、一部天井を高くして光幕天井を設置し、上部からの自然光に近い柔らかな光が設置された作品を照らすようにしている。今後は絵画などの展示を行っていくため、天井高さを確保し作品を集中して吟味してもらう空間にしている。

ギャラリースペースBは壁に囲まれた空間とし、スポットライトで個々の作品を照らす空間としている。またプロジェクターを使用した映像作品の展示などを行えるようにしている。ギャラリースペースAとBはオープンとクローズのような対照的な空間とし、スペースを使用する作家が展示の幅を広げることができるようにしている。今後も様々なジャンルのアーティストによって空間が使用され、展示されていくことを期待している。改装工事が終わり、移転オープンした後、近隣の人々からはこの建物を残したことに対する良い反応があり、また市からも好意的な反応を頂いている。

 

GALLERY crossing opened along Nakasendo Road in Minokamo City, Gifu Prefecture, about five years ago as a gallery dealing with crafts and art. This project is a relocation and renewal project of GALLERY crossing. The new location is a 30 second walk from the previous location. The project started when we heard from a neighbor that the owner of GALLERY crossing was going to demolish the building, and after negotiations, we took over the building. The initial plan was to apply for a Minokamo City subsidy that could be used to renovate the building, and the main construction work, such as the exterior walls and entrance door, was carried out according to the specifications for the subsidy, but as the interior and exterior construction area became larger, the construction costs increased. The owner was reconsidering the plan, considering the meaning of applying for the subsidy. The owner consulted with Shunsuke Kato of NOTA&design as director, and Yokoyama and Kawai of TAB joined as store designers to rework the project. In the course of the planning process, it was determined that this building had previously operated as a diner under the name “Asahiya” and had been familiar to the townspeople since that time, and that it was located at the corner of an intersection from the main street, making it a landmark on Nakasendo Road, and that this building was etched in the scenery of the townspeople as a scene from Nakasendo Road. Therefore, we decided to proceed with the plan in the direction of preserving the exterior of this building in the town without changing it as much as possible. The plan was to install two large windows and an entrance door next to them so that the main gallery space A could be viewed from the street on the east side of the building. The color tones were matched by using the same specifications as the mortar-gilded trowel walls used on the original exterior.

The entrance door was installed at 600mm from the GL, and from there the entrance into the interior is +450mm higher than the 1FL. From the entrance space, one has a bird’s eye view of Gallery Space A and Gallery Space B, from where one can descend the stairs to the respective spaces. Gallery Space A has two large windows that connect to the exterior and allow visitors to look out. The ceiling has been partially raised and a light curtain ceiling has been installed so that soft, almost natural light from above illuminates the installed works. In order to exhibit paintings and other works in the future, the ceiling height has been secured to provide a space where visitors can concentrate on examining the works.

Gallery Space B is a space surrounded by walls, with spotlights illuminating individual works. It is also possible to exhibit video works using a projector. Gallery spaces A and B are contrasting spaces, open and closed, to allow the artists who use the spaces to expand the range of their exhibitions. We expect that the space will continue to be used and exhibited by artists of various genres. After the renovation work was completed and the building was relocated and opened, the neighborhood has responded positively to the decision to keep the building, and the city has also responded favorably.

Direction : 加藤 駿介(NOTA&design)
Interior design : 横山 将基(TAB)、河合圭吾(TAB)
Photo (1~4) : 黒元 雅史(STUDIO  crossing
GALLERY crossing : https://crossing.gallery/

 

2022.11.09

MATOYA (Matsumoto-cho)

岡崎市のMATOYAの移転計画になります。
今回の店舗での必要な機能として、常設展示スペース、企画展示スペース、バックヤード、商品撮影スペースでした。
MATOYAはオーナーが企画ごとに作家に合わせ空間を変えて展示を行うことが多く、フレキシブルな空間が求められました。
私たちはオーナーがこの場所を運営していくための補助線となるような空間をつくることを目指しました。

今回の計画はMATOYAのロゴの文字にある正方形のグリッドの補助線を起点にプランを考えていきました。
ライン照明の正方形を空間の左右対称に配置し、この正方形のラインを床へと投影し、床の目地のラインの基準が決定しました。そのラインを起点にカウンターのデザインへと展開させました。
この過程の中で常設&企画展示スペース、既存の水回りを隠すようにバックヤードと商品撮影スペースの位置が配置されました。

今回の工事予算に合わせ、工務店さんにお願いする工事(大工工事と電気工事、左官工事等)と施主施工で行う工事(什器や塗装工事)に分けて進めていくことにしました。
プランが進んでいく中で以前のお店でも使用していたKIOSKを今回のお店に合わせて再設計し空間の中心に設置し、商品棚として利用することにした。
また常設&企画展示で使用することを想定した造作棚のパーツをMATOYAオリジナルとして設計し制作しました(こちらはMATOYAで購入可能)

写真はオープニングイベントの様子になります。そのほかの写真はこちら
以前の籠田公園前のMATOYAはこちら
MATOYAができるまでのプロセスはこちら

2022.02.28

SLBH 6

その他の写真はこちら

「SLBH6」―グリット(規則性)・越境・ズレ

敷地は比較的古く(1960~70年代)からある住宅地。使える敷地面積は140m2程度とこの辺りでは少し小さい。母屋・既存庭との関係、北側の隣家への配慮、周囲からのプライバシーの確保、内部への陽光から、建物は母屋に対して23度振って配置した。建物へのアクセスは母屋の東側(3m程度)を通り、少し振られた入り口の土間が来訪者を迎え入れる。入り口の前には周囲から守られた庭があり、ここに住まう人びとはその場所で、食事や焚火などをして交流している。

構造・構成は1間グリット(規則性)を基本とし、21本の通し柱のうち外周の柱はグリットからズラし、中央の柱を45度振り、同じ階高(2,005mm)の3層を積み上げた。1層目はGLと地続きの土間をもち、洗濯干しや登山道具などの倉庫、また庭の延長として、周辺環境やコミュニティとのインターフェースとして働く半屋内外空間を配置した。2層目は窓をもたず、周囲と物理的距離を取り、安心感のある生活の場である。3層目は360度の開口をもち、風景・光・風を取り込むバッファーとし、仮設的な床をのせ容易に生活の場を拡張することができる。

中央の階段室はグリットより45度振られ、各層とズレながら螺旋状に上がっていく。階段室とその周りの用途が互いに越境し合い、住人は各層と階段スラブを行き来するたび、あらゆる方位や上下方向へ体感的な奥行きを感じる。

ファサードは各層で異なり、ポリカーボネート波板、ヒノキ30×40mm角材による格子壁、アルミサッシとし、ヒノキ格子壁をほかの層へ越境させることで、日射遮蔽と視線の制御をしている。この格子壁は未経験の住人が施工しているが、簡易かつ綺麗につくれるようガイドとなる治具をレーザーカッターでつくり、ひとりで500本程度の木材を取り付けた。屋根は方形とし垂木は放射状に掛け、裏表のない建築としている。また、内部の階段スラブ、床の張り方向などすべて中心の柱を起点に放射状に外へ向かうようにすることで、階段室の螺旋状、各層の回遊性をもちながらも、外へ意識が向かうようにしている。住人はさまざまな居場所を見付け、間取りを更新しながら住みこなしていく。

 

建築の当事者になること

SLBHシリーズのほとんどは建築する際に、設計、現場管理、現場作業の3つの職能を担っているが、正直に言ってしまえば設計以外においては積極的に担いたいとは思ってはいない。私が適正と思える質と価格で他者がつくってくれるのであれば、喜んでお任せしたい。しかしながらSLBHは多くの場合においてその様にはならない。工務店批判ではなく、質のとらえ方が違うからかもしれない。それは一般論としての質のよいものが優れているばかりではなく、「適度」を見極めるつくり方も重要であると考えている。クレームのとらえ方の違いとも言い換えられるかもしれない。

設計者として、建築を実現するためにコストマネージメントはとても重要である。多くの場合、素材よりも施工方法によってコストがかかることが多い。それは独創性を求めた意匠とクレームレスにするために手を尽くし過ぎるからかもしれない。そういった部分を簡素かつ安全な設計・施工とすることで、人工を抑え素材にコストをかけることができる。SLBHは即物的なつくり方ゆえ、素材のもつ個性は建築の質に直結するため、とても重要である。

職人、私、住人が施工する場合、それぞれの質が変わらないように施工方法を設計している。DIYの前提は、価格を抑えるため、思い出づくりのために行うのではなく、家づくりの当事者になるために行っている。3者(職人・私・住人)に合わせて施工方法を設計することで、職人よりも住人の方が上手くつくることができる部分も出てくる。現在は職人ゆえに制作可能な高度なパーツも、将来的にはデジタルファブリケーションに置き換えられ、プレカット+デジファブと施工方法の設計、各要素の分離によって多くの部分をDIYでつくることができるのではないかと考えている。

自身(私・住人)が思い描いた建築を自らの手でつくり上げる本当の意味での当事者となることで、代えがたい緊張感と喜びを得ることができる。今日もそれを味わうため、設計と施工を行き来する。

第8回JIA東海住宅建築賞2021 優秀賞受賞

■建築概要

名称:SLBH6(Super Low-cost Big House 6)
所在地:岐阜県各務原市
主要用途:住宅

家族構成:夫婦+子供2人

建築面積:52.99㎡

延床面積:105.98㎡

主体構造:木造在来工法

総工費:1600万円(造園・消費税含まず)
設計期間:2020年1月~2020年10月
工事期間:2020年11月~2021年3月
DIY期間:2021年4月~ 継続中
設計:株式会社TAB/河合啓吾
施工:株式会社TAB/河合啓吾
造園:小椋裕司

写真:新建築社

 

■建材表

 

外装/屋根:ガルバリウム鋼板小波葺き

外装/建具:アルミサッシ/サーモスL メーカー/LIXIL

外装/外壁:桧3040

内装/1階天井:硬質木片セメント板/ベランダくん メーカー/ニチハ

内装/キッチン:SUS天板 メーカー/E:Kitchen

内装/照明:LED電球(トロードフリ) メーカー:イケア

2022.01.14

keu

TABの横山が運営するセレクトショップ兼ギャラリー。
TABが入居するST3の2Fにある南原食堂の隣にあります。
KIOSKをベースにホームセンターにある資材でDIYで組み立てました。
最小のショップ、スペースを自らで運営しながら企画、自らのプロダクト、作品の制作、セレクト商品の販売などを行っていく。コンテンツの運営から空間の設計を考える実験の場所として機能していくことを目指しています。

keu
https://www.keu-obj.com/

2021.10.11